親の最後の願い

7月18日(金)晴れ
毎日夜になると、我が家の裏にある溝?から
「クヮ〜〜〜〜ン、クヮ〜〜ン」というような声が聞こえる。
ある時、じじに「何の声?」と聞いたら
「カエルが鳴いているんだよ」と。
蛙の声って「ゲ〜コ、ゲ〜コ、ゲ〜コ」と鳴くと思っていたから
最初ビックリした。
島にも、何種類かのカエルがいると思うが
ばばが子どもの頃は稲作が盛んだった徳之島、
水が張られた田んぼで鳴く蛙の声は、
「ゲ〜コ、ゲ〜コ、ゲ〜コ」だった。
だから、夜な夜な「クヮ〜〜ン、クヮ〜〜ン」と聞こえる声が
カエルの声とはビックリした。
鳴き声の主を見たことは一度も無いが、
時折、昼間、我が家の花壇や塀の脇に
茶色のカエルがいるのを見かけるので、このカエルの声かと・・・・

で、カエルと言えば・・・・
母が話してくれたカエルの話を、未だに忘れられないばば。

ばばは、子どもの頃、兄姉の中で、一番のきかん坊だった。
・・・・・と自負する位だから、相当な我が儘だった。
一番怠け者だったばば。
実家は農家だから、1年中忙しい。
小学校上がる前から手伝いは山ほどあった。
牛の草刈り・豚の餌にする芋づるを刈り取り芋を掘り
田植えに稲刈りに脱穀、キビや落花生、麦等の収獲、
牛や豚の糞尿を畑に運ぶ・・・・等々
農作業は、ありとあらゆる事を手伝った。(手伝わされた)
兄や姉は大人しく真面目に一生懸命働いていたが、
末っ子のばばは、いかにして作業をサボるかということばかり考えていた。
そんなばばの性格も全て知っていたであろう母が、
ある雨の日、ばばに「お話」をしてくれた。
外では、盛んに雨ガエルが鳴いていた。
「○子、外でカエルが鳴いてるよね。
あのカエルは、雨が降る前とか、雨が降り出すと鳴くんだよ。
どうして、雨が降ると鳴くか知っている?」と話し始めた母。

「昔ね、ある所に雨、ガエルの母子がいた。
カエルの子どもは、親の言うことを全然聞かない子どもだった。
お母さんが、山へ行って木を切ってきてと言うと
川へ行って水を汲んできた。
川へ行って水を汲んできてと言うと、山へ行って木を切ってきた。
いつも、お母さんの言うことの反対のことばかりしていた。
何年か経って、自分の死期が近いことを知ったお母さんは、
自分が死んだら、山に埋めて欲しいと思っていた。
でも、子どもに山に埋めて。。。と言っても、
逆に川に埋めるだろう・・・・と考え、
お母さんが死んだら、川縁に埋めてねと頼んだ。
ある日、とうとうお母さんは死んでしまった。
お母さんが死んでから、子どものカエルは
今まで自分がしてきたことを泣きながら反省した。
しかし、もう、お母さんはいない。
せめて、お母さんの最後の願い・・・自分が死んだら川縁に埋めて
という願いは叶えてあげたいと思い、実行した。
しかし、翌日から大雨が降り出し、何日も続いた。
カエルの子は、川縁に埋めたお母さんが大雨で流されてしまうのではないか
と、心配で心配でたまらなくなり、ずっと鳴き続けた。
だから・・・今でも雨の前とか、雨の日になると
雨ガエルの子は鳴くんだよ・・・・」と、母は話を締めくくった。

最後の最後で心を入れ替えた雨ガエルの子どもだけど、
時既に遅し!

母は、ばばの性格を知っているからこそ
意図的に、この話をしてくれたと思う。
ばばは幼かったけれど、母のこの話に強い衝撃を受けた。
その時は「お母さんの言うことをしっかり聞いて、良い子になろう」と
真面目に思った。
その気持ちがずっとずっと続けば良かったんだけど
いつの間にか、まただんだん「怠け者&きかん坊」ばばは徐々に復活。
未だに、その性格は治っていないかも。
だから、現在、一番の被害者はじじ。
ごめんよ〜。

ばばが、この話を聞いてから、既に半世紀以上過ぎた。
母が亡くなってから18年経った。
しかし、未だに、母が話してくれた「雨ガエルの親子」の話は忘れられない。
時々思う。
ばばの両親は、未だに忘れられない色々な話をしてくれた。
ばばの人生を決めるような話も幾つも・・・・
ばばは、自分の娘達の心に響く話を1つでもしてあげただろうかと・・・・

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