がんばれ!飛べ!
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10月17日(土)曇り後晴れ
昨日の続き・・・・・・・・・・・・・
高さ、6,70メートルはあろうかという絶壁の真ん中から少ししたあたりに
なにやら茶色の固まり発見!
ばばが肉眼で見る限り、木の根っこ?もしくはキジバトがとまっているようにも見えた。
じじはすぐにカメラのズームを目一杯聞かせて確認。
「頭に赤い帽子をかぶっている!珍しい鳥だ!」と言うや
崖下に並べられたドラム缶の後ろへ走っていった。
ばばも「珍しい鳥!」の一言で一気に好奇心の炎が燃え上がった。
興奮した中でも、ばばは考えた。
じじの撮影位置は、崖下から真上を見上げる形でしか撮影できない。
それよりは、少し引き返してがけの上にある畑脇から取った方が良さそうだ・・・と。
そこで、ばばは走って引き返した。
その道は、以前ばばが時季外れ格安のタンカン(実はほぼ全部の中身はスカスカだった)を買い
姉と二人、何か悪いことでもしているかのように
10キロ近くもある袋を上着などで覆い隠して息を切らしながら坂道を上がり我が家へ運んだ道だ。
坂の傾斜は45度くらいか?いや、それよりきついかな?
でも、「珍鳥」と聞いたからには「何だ坂、こんな坂」ってことで
夢中で駆け上ったよ。
もし、ばばが畑に着くまでに飛び去りでもしたら、ばばの苦労は水の泡だ。
もし、畑の脇から鳥がはっきり見えたら、崖の下にいるじじに合図を送って
上がってきてもらおう・・・・・・
ばば、急げ!!!!
ばばがもうすぐ畑に着くという時、道ばたには下校途中の3名の男子中学生が
何か食べながら大声で話していた。。。。
3名のうち、一人はピアスらしきものもしている。
もし、この子たちが珍鳥を発見して、大声を上げるか石ころでも投げたら・・・・・と考えたばば、
機先を制して「あのがけの上にいる鳥の写真を撮るから・・・急いでいるの」と。。。。
すると、3名の中学生は一斉にばばが見ている鳥の方へ目を向けたが声を潜めてくれた。
畑に着いたばば、アメリカセンダングサの種子が付くのも何のその。
畑の脇を通って、崖のすぐ横まで行き、崖を上った。
が・・・・・・・・・じじが撮影している6,70メートル下を見たとたん
ばばは目眩がしそうになり、足がガクガクしてきた。
ばばの立っているところの幅は1メートルもなく、そのまま絶壁になっているのだ。
それでもなんとか踏みとどまり、「ここの方が良いよ〜〜〜」と
じじにゼスチャーで合図。
じじも急いで一脚を閉じて、引き返すコースへ走り出した。
じじが来るまで、どうぞ、飛び立たないで〜〜〜。
じじが早く来てくれることを祈りながら鳥の方を見た。
ばばが見ても何の鳥かさっぱり分からず、キジバトにしか思えなかった。
・・・・・・・・・・・待つこと数分。
やっとじじの姿が見えた。
息を切らして駆け上がってきたじじ「あれはサシバだよ」と言う。
「え〜〜っ、あんな色してた???それにちょっと小さいんじゃない?」と思ったが
「じゃ、雛?」と聞いた。
「雛ではないけど若鳥だろう」とじじ。
じじは、ばばの立っていた場所よりもっと先へ行きカメラを構えた。
見ているだけでドキドキする。
もし、低血糖でも起こしふらついたら、真っ逆さまに6,70メートルの絶壁を落ちてしまう。
じじを見ているだけでばばの足はジンジンしてきた。
早く引き返してきて欲しい、でも、良い写真も撮って欲しい。
相反することを考えながらじじを見守り、鳥を見ていた。
すると・・・・鳥が動いた!
飛ぶのかと思いきや、90度の絶壁を羽を広げて羽ばたかせ
体全体でいざるように上の方へ30センチほど進んだ。
進んだところで、しっかりした足場や、デコボコもない。
どうしてあんな所に留まれるのか不思議なくらいの場所に鳥はとまった。
数分休んでは、又同じ動作を繰り返す。
何回か見ているうちに、ばばは鳥の左羽が異様な動きをするのに気付いた。
羽ばたいた後、右の羽はきれいに収納されるのだが、左羽は開いたままのような形で
しばらく立ってから収まる。
きっと、羽を汚しているのだろう・・・・と思うと
ばばは必至に絶壁を上がる鳥が愛おしくなって「がんばれ!、がんばれ!」と
心の中で声援を送り続けた。
いざり上ること十数回、鳥はやっと崖の頂上草むらにたどり着いた。
ばばは思わず拍手をしてしまった。
じじの撮影は続いている。
「飛べるだろうか?」
「もしかして、親鳥が連れに来るのだろうか?
もし来たとして、あれだけの大きい鳥、どのようにして安全な場所へ移すのだろう・・・」
ばばはいろいろなことを考えていた。
辺りはすっかり薄暗くなっていた。
「帰ろう!」とじじの声がした。
崖のてっぺんに静止して動かない鳥に心を残しながらも
どうして上げることも出来ない自分が歯がゆかったが仕方がない。
鳥たちが大自然に生きる厳しさを考えながら歩き始めた。
あの鳥はどうして怪我をしたのだろう?
仲間にやられたのか?カラスにやられたのか?
それとも、自分で木の枝とかにぶつかったのか?
この後、うまく生き延びることが出来るのだろうか?
いや、今晩一晩を無事過ごせるのだろうか?
あの翼は自然治癒するのだろうか?
生きるために、きっと全身全霊を注ぎ、ありったけの力を振り絞って
約40メートルくらいの絶壁を登り切った一羽の鳥。
ばばは、なぜか神聖なものを見たようで厳粛な気持ちになった。
帰宅後、じじが撮った映像を見るとばばの肉眼でははっきり分からなかったが
模様などから見ても、あの鳥はやはり「サシバ」の若鳥だった。
サシバ・・・最近、夕空を優雅に舞っている姿を何回も見かけた。
今日の若鳥も悠々と空を舞って欲しい・・・・・・・・