真夜中の一撃

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8月23日(日)晴れ

数日前のことだ。

じじは既に夢の中。

娘たちと孫も寝る態勢で布団の中。

ばばは寝る前にシャワーを。。。。

髪を洗い、体も洗いさっぱりして、いざ出ようという時に

お湯と水の配管パイプの隙間に建ててある歯ブラシが気になり

取って片づけようとした。

歯ブラシを手に取り、手前に動かそうとした瞬間!!!!!

ばばの中では「水戸黄門」のドラマで助さんや格さんが

悪者相手に立ち回る斬り合いのシーンが鮮やかに蘇ったと同時に

「シューッ」という音さえ聞こえた。

そして、右手薬指の上部が何かに切り裂かれるような何とも言えない痛みが!!!

一瞬、我が実に何が起こったか理解さえ出来なかったが

ハッと我に返り、痛みを感じた部分を左手で咄嗟に強く握った。

(何があっても手を放さないぞ)と言うくらいの気迫で。

そして、握ったまま両手を上に上げた。

(どうぞ、血が出ませんように・・・)と祈りつつ。

さっきのシューッという気配、この痛み・・・・

きっと深く深く指を切ったに違いない。

もう、深夜。

じじは寝ている。

救急車など呼んだら恥ずかしい。

娘二人はペーパードライバーだ。

自分でクルマの運転が出来るか?

イヤ、とても出来ない。

もし、出血多量で万が一の事に出もなったらどうしよう・・・・・

一瞬の間に色々な事が次々と頭の中を駆けめぐった。

 

それよりも現実的な事にハタと気づいたばば。

この態勢でどうして洋服を着ようか考えた。

その前にまず、傷の手当てを・・・・

血を止めてから着替えても良いんじゃない?

そこで、裸のまま薬箱を捜したが不幸な事にタンスの上だ。

仕方がない。左手で右薬指を握りしめたまま椅子を運びその上に立ち

薬箱を降ろし、包帯を捜し出した。

そして間髪を入れず怪我をした薬指の先に被せ

なるべくきつく巻いた。

指は「ドクン、ドクン」と脈打つような痛みにひっきりなしに襲われる。

半ば放心状態で服を着て、それでも右手は頭より高く上げて

大量出血しませんように・・・・血が噴き出しませんようにと祈った。

しばらくすると、指の痛みは治まらないままながら

(何で、風呂場に指を切るような場所があったっけ?)と気になりだした。

風呂場に戻り、あちこち見るが危険箇所はなさそうだ。

ばばが痛みを感じる直前触った場所と言えば

お湯を配管するためのパイプのすぐ上。。。。

あちこち触ってみるが、どこにも怪我をしそうな場所はない。

キツネにつままれたような気持ちで、

あちこち触り続けていると一カ所だけ怪しい場所が・・・・

それは、配水管が熱くなった時の危険防止のため?に

鉄パイプの上に巻いた断熱材を縛ってある幅5?ほどの結束バンドの切り口。

そこを、左手で触ってみる。うん、うん、ここなら指を怪我してしまうかも知れない。

シャワーを使った後、指の皮膚は柔らかくなっていたであろうし・・・・

やっと、犯人??を探し当てたばばは安心して眠ろうとした。

しかし、怪我をした?指は熱くズキンズキン、ドクンドクンと脈を打ち続ける。

(もし、寝ている間に出血が続き明朝目覚めなかったらどうしよう・・・)

等と考えると、なかなか寝付けない。

包帯を巻いた指を見る。出血跡は見られない。

とにかく明日朝まで様子を見てみよう・・・・

いつの間にか、ばばは夢の中へ。

そして、翌朝目覚めてすぐに指を確認。

寝た後も出血はなかったらしい。

脈打つような痛みもない。

じじや娘たちにも夕べの出来事を報告。

いったん同情はしてくれ、心配そうな顔をした直後、

「風呂場の何処にそんな怪我をする場所があるのよ〜〜」

と三人三様にまるでばばを非難するような物言い。

ばばは「幅5?ほどの結束バンドの切り端」のことを説明するが

それでも合点がいかないような三人。

またしても「お母さんって、人がしないような事を、よくやってしまうよね」と。。。。

家族に笑われてしまった。

どんなに非難され、バカにされようとばばが怪我をしたのは事実。

だけど。。。。。。。。。。。。。

臆病なばばはどれほどの怪我かは確認していない。

指の腹真一文字に切ったのだろうか?

もし傷口が小さくても深かったら・・・・・

ばばは、それから3日間包帯を外して傷口を確認する事すら出来なかった。

そして、4日目恐る恐る包帯を外してみた・・・・・・・・・・

あんなに心配したのに、なんと言う事はない。

傷は長さ僅か5?ほど、深さもほんの数ミリ。

現実を目にした途端、ばばは大声で笑いたくなった。

でも、怪我をしたあの瞬間確かに聞いた「シュッ」という切り裂くような音。

ドクンドクンと脈打つような痛み。

その痛みは丸1日続き、徐々に薄れてはいったが。。

あれらは一体何だったのだろう

超が付くくらい臆病なばばの一人芝居???

まっ、そう言われても仕方ないかな?

今、怪我をした薬指でもキーを叩きながら不思議な気持ちになっているばばだ。

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