舟を流す

8月21日(木)晴れ
朝食後、(よ〜〜し、今日も頑張るぞ!)と
気合いを入れていたところに電話。

受話器を取ると、ご近所のおばちゃんからだった。
「ばばちゃん、あなたが先日見たいと言った物、
写真撮ってあるから、見にいらっしゃい」と。
ばばは、今日も又、すぐに走って行ったよ。

ばばが、見たかった物・・・
それは送り盆と関係があるので、少し詳しく書くね。
じじの家では、お盆は13日にお墓に行って先祖様を迎えて来て
14日は1日中、15日は3時頃まで、お茶やお菓子、肉や野菜の煮付け、
おはぎ、素麺、お団子等で先祖様をもてなす。
そして、15日は、一族揃ってご馳走を持ってお墓に行き
お墓の前で、先祖様と一緒にご馳走をいただきながら
楽しくお喋りをしたりして帰ってくる。
この日は、提灯をともして夜暗くなるまでお墓で過ごす人達もいて
お墓周辺は、両側駐車で、なかなか車では通れない。
交通渋滞にもなるが、昔からの送り盆の風物詩でもある。

叔父、叔母も何名か亡くなり、
数年前からお墓へご先祖様を送っていくのはじじとばばだけになったので、
最近はご馳走を作ることもなくなった。
子ども達も小さく、叔父、叔母みんな元気だった頃は
10名以上の親戚がお墓に集まるので
ご馳走をお重の幾つにも詰めた。
お墓で、1人ずつにお箸で挟むのだが、ばばは面倒くさくなって
全員分それぞれ、折り箱にご馳走やお団子を
詰めて持って行くようにしていた。
難儀だったけど、今となっては懐かしい思い出だ。
・・というのが、ばばの住む地区の送り盆。

ばばに電話をくれたご近所のおばちゃんは、ご主人が島外の方。
その、(ご主人)おじちゃんが亡くなって、もう、3,4年経つ。
この、(おじちゃんの郷里では、送り盆の日は
板で作った舟にご馳走を入れて、海へ流すのだそうだ。
おじちゃんがお元気な頃もずっと、そのようにしてきたそうだ。
おじちゃんのお墓は、島外の故郷の地にある。
それで、おばちゃんのお宅では、おじちゃんが亡くなってからも
送り盆の日は船にご馳走を乗せて海に流すんだって。

前置きが長くなったけど、送り盆にご馳走を入れて流す「舟」って
どんな物だろう?
ばばは、とても興味があった。
ちゃんと板で作るんだって。
ばばが、「その舟、見てみたいなぁ」と言ったのを
おばちゃんが覚えていてくれて、写真に撮ってあるから見にいらっしゃいって。
ばばが行くと、おばちゃんは玄関で待っていて下さり
アルバムを見せてくれた。
お土産をいっぱい積んだ舟の前で、おばちゃんやお嬢さんが
ご馳走もいっぱい並べて、にこやかに笑っている。
その舟とは?・・・
まぁ!ちゃんとした板で出来た立派な舟!
形は、何と表現したら良いのだろう?
刺身など舟盛りにする、あの舟の形と似ているかなぁ?
ちゃんと、帆も立っていたよ。
長さも、30センチ以上はあるようだ。
小さくても、薄いベニヤ板のような板で舟の形を作るって。
相当難しそうだけど、とっても綺麗な形に出来ていて
ばばは感心したり、ビックリしたり。
おばちゃんの話に依れば、この舟にご馳走やお土産を入れて
海岸に行き、鹿児島航路の定期船が鹿児島へ上る時刻に合わせて
海に流すんだって。
少し、海の中へ入って行って、定期船が目の前を通る時に
舟を海に浮かべると、ツ〜〜〜ッと舟も走り出すらしい。
「おばちゃん、舟に入れたご馳走はどうなるの?」と聞くと
「何処かへ舟と一緒に流されて行くんだろうね」って。
「じゃぁ、何処かで誰かが拾う可能性もある?」と聞くと
「あるかもねぇ〜」って。
舟は、一体どこまで流されて(進んで)行くのだろう?
ちょっと夢のあるお話だね〜。
そうそう、舟にはね、ご馳走だけでなく、現金も入れて流すことがあるって。
おばちゃんは、以前、数千円入れて流したらしいけど
お嬢さんが「お父さん、お小遣いが少なかったら可愛そうだから」って
1万円入れたんだって。
わぁ〜!
もしも、この舟、何処かの浜に流れ着いて拾った人がいたら
ビックリしただろうね〜。
他にも、このような送り盆の行事のある地域があるのかなぁ〜

おじちゃんは亡くなったけど、毎年「流すための舟」を作ってくれる
娘婿さん、お父さん思いのお嬢さん、徳之島にいても
おじちゃんの郷里の送り盆の伝統を守り続けるおばちゃん。
素敵な家族だなぁ・・・・・・

来年は、流す前に「あの舟」を見せてもらおう・・・って、
ばばは、今から思っているよ。

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