ばばは、お節介
8月29日(月)晴れ時々曇り
昨夕、買い物を終えて自宅の手前の坂を上がった時、
黄緑色の乗用車が止まっていて、運転席に女の人が一人乗っていた。
車の横にはばばの家の隣のT姉さんがいて、
車中の人を見送っているようだった。
「どなたかな?」と思いながら車の横を通ったら・・・・・
あらぁ〜〜〜〜〜S姉さん。
そう、ばばが2年間、毎夕方刺身を買いに行って
お世話になった鮮魚店のS姉さんだ。
S姉さんも、すぐばばに気づきドアを開けてくれたので
固く固く握手した。
いろいろな事情で急に鮮魚店を閉店し、
少し離れた所に住むお嬢さんの家の横に家を建て
お盆前には引っ越しされたので、一月近く会っていなかった。
思えば、2年間、毎日一番美味しい魚を見繕い刺身に切ってくれたS姉さん。
じじは、刺身を食べながら「自分は幸せ者だな・・」って何回となく言っていた。
お盆も、お正月の三が日でさえ、じじのために刺身を準備してくれたS姉さん。
S姉さんのお店は病院近くにあるので
義父のお見舞いの行き帰りに、毎日寄っていた。
イヤなことがあっても、S姉さんと話すことで鬱憤が晴れ、
楽しい話を聞いては大声で笑い・・・
ばばの癒やしの場所でもあったS姉さんのお店が閉店して
ばばは、毎日スーパーを回って刺身を買わなくてはならなくなった。
病院とスーパーは逆方向なので、義父を見舞ってからスーパーへ行ったり
時にはスーパーに寄ってから、自分の家を通り越して病院へ向かうこともある。
S姉さんのお店が閉まって、残念がり、困っている人はばばの他にもたくさんいる。
それだけお得意さんが多かったもの。
年末とか「年の祝い」の時などは数千パックの刺身を一人で切っていたS姉さん。
これからは、少しご自分の体もいたわりつつ
ご主人やお嬢さん家族と楽しく暮らして下さいね〜。
そのうち,S姉さんの引っ越し先へ寄ってみようと思っている。
S姉さんを見送った後、T姉さんが「あら、あのバイク、どうしたのかしら?」と言う。
見ると、ばばの家の向かい側の道路にはトラックが一台止まり、
ばばの家の前にはバイクが止まって、おじいちゃんがバイクの座席の辺りを
一生懸命触っているように見えた。
「どうしたんだろう・・」と思っていると、
ばばも顔だけは知っている女の方がT姉さんとばばの方へ近づいてきた。
そして「バイクの燃料が無くなったので、入れてここまで走ってきて止まったら
バイクの鍵が抜けなくなって・・」と言う。
辺りは薄暗くなっている。
バイクをいじっているおじさんは、女の方のご主人なのだろうか?
ばばは、咄嗟に「ちょっと主人を呼んできます」と言い
階段を駆け上がり、玄関から奥へ向かって
「じじ〜お願いだから、ちょっと助けて欲しいことがあるんだけど・・」
と声をかけながら家に入り、奥の部屋へ行き、懐中電灯を持って、又階段を下りた。
出しなにじじの部屋を覗くと、潤滑油と何か工具を出しているのが見えた。
ばばが階段を下りた時、バイクは少し移動してT姉さんのお店の前辺りに置かれていた。
まだ鍵は抜けないようだ。
じじがやって来た。
バイクの持ち主は恐縮しながら、じじに感謝の言葉を言っている。
じじはすぐに鍵に潤滑油をかけ、しばらく鍵を回していたが
どうしても鍵は抜けない。
何分間か繰り返していたら、燃料タンクの蓋毎ポンっと抜けてしまった。
それでも鍵は抜けない。
じじは、工具で鍵を挟んで回して抜こうと試みる・・・・・と、あれっ?
鍵が抜けた!でも、タンクの蓋に装着して鍵を閉めようとすると又抜けなくなる。
じじもしばらく悪戦苦闘。
何分くらい経っただろうか?
じじの奮闘の甲斐あって、遂に鍵は抜けた!
やったね、じじ。
バイクの持ち主夫婦もじじに感謝の言葉を何回も言った。
上手く鍵が抜き差し出来るのを確認して、じじとばばは階段を上がった。
上がりながら「じじ、ごめんね。ばばのお節介から難儀させちゃって。
でも、困っている人見て黙っておれなかったんだ」と言うと
「いいよ。困っている時はお互い様だから」ってじじ。
そう言えば・・・・今年初めコハクチョウを求めて彼方此方走り回った時
畑中のぬかるみにタイヤをめり込ませて困っていた時、
通りがかりの方に助けていただいた事があったよね〜。
助けて下さったのは、九州農政局にお勤めのSさんだった。
Sさんと、部下の若者ふたりが神様のように見えたよね〜。
あの時はばば達が助けていただいたけれど、その時の恩返しが出来たような気がした。
Sさんが、ばば達を助けて下さった時
「日本はまだまだ捨てたもんじゃないね。いい人はたくさんいるよね」と
じじやばば姉と話したけれど、自分がされて嬉しかったことは、
少し形は違っても他人にもしてあげようと常日頃思っているじじとばば。
過日のことを思い出しながら、「バイクの方は上手く帰れるかな?」と
道路側の窓から下の道路を覗くと、
あらっ!おじさんが一生懸命エンジンをかけようとしているけれど
なかなかエンジンがかからない。
又じじの部屋へ向かって「じじ〜今度はエンジンかからないみたいよ〜」と
声をかけた。するとじじはタタタッと階段を駆け下り、バイクの所へ行って
バイクにまたがりエンジンをかけ始めた。
一回・・・・
二回・・・・・
三回・・・・・ブルンブルンブルルルルルル〜ッ!
かかった!
やったぁ!
エンジンがかかったのを見定めて、ばばは台所へ行き夕食の準備を始めた。
階段を上がってきたじじ、「僕は機械のことなら大体分かるし、
バイクは専門だから・・」ってさ。
そうだよね〜、若かりし頃は大小いくつものバイクを乗り回し
バイクのご縁で東北のAさんとも繋がったものねぇ・・・・
いつも「何も仙人(せん人・・しない人)」なんてじじに悪口言うばばだけど、
今日は、改めてじじを見直したよ。
「良いことをしたら、きっと自分たちにも良いことが回ってくるよね」と言いながら
穏やかな気持ちで食事を始めたじじとばばでした!